庄司−菊田戦は好取組みにふさわしい将棋でした。
昨年12月の「朝日アマ名人戦宮城県代表決定決勝」でも、両
君は対戦しています。
その時は庄司君が熱戦を制して代表戦進出権を獲得しています。
年代は庄司君が約ひと周り上になりますが、共に中学生選抜全
国優勝の実績をもち、(菊田君は中学生名人にもなっている)目
下の宮城県下ではトップ同士のライバル対決といってよいでしょう。
尚、解説の区切りとする関係で、各譜指了時点で図面表示してい
ますが、図面は省略しています。
R選手権南東北予選決勝
▲ 菊田 公毅
△ 庄司 弘光
<持時間各35分/切40秒>
▲76歩 △84歩 ▲26歩 △85歩 ▲77角 △34歩
▲88銀 △32金 ▲78金 △77角成 ▲同銀 △42銀
▲38銀 △72銀 ▲16歩 △14歩 ▲46歩 △94歩
▲96歩 △64歩 ▲47銀 △63銀 ▲68玉 △52金
▲58金 △54銀 ▲56銀 @△65歩 ▲45銀 (1図)
解説@
戦形は、先手の菊田君が誘導したような流れで「角換腰掛銀」へ。
@△65歩は、後手番でよく採られる作戦。
但し、先に△44歩を優先し、次に△65歩の位取りとする順なら
ば、つづくA▲45銀(ガッチャン銀)を拒否出来る意味はあった。
1図以下、
B△55銀 ▲34銀 △46銀 ▲25歩 △84飛 ▲56角
C△55角 (2図)
解説A
B△55銀では、△45同銀 ▲同歩 △33銀 ▲75歩 といっ
た順が考えられる。これはこれで一局だが、後手としては受け身
になり易いだけに面白くないと見たのか。
▲34銀 △46銀 と、互いに銀が進出。△84飛 ▲56角に対
し、C△55角と後手も対抗する。この手で△55銀も自然そうだ
が、以下、▲23銀成 △31金 ▲45角 △62玉 ▲24歩
くらいで先手に不満なし。
2図以下、
▲24歩 △同歩 ▲同飛 △22歩 D▲33銀不成 △24飛
▲同銀不成 E△41玉 F▲47歩(3図)
解説B
D▲33銀不成 − 2筋歩交換からの狙い筋。▲24同銀不成
は後の35銀を消してこう(不成)取るところ。
E△41玉 − 飛交換の展開でこの1手が必要なだけに、
結果的に手番が振り替り先手がリードを維持している感じだ。
F▲47歩 − 力量を感じさせる一着。この類の手は、分
かっていても指し難い意味がある。
3図以下、
△28飛 ▲84飛 G△29飛成 ▲46歩 △89竜 ▲81飛成
△51銀 H▲23歩 (4図)
解説C
G△29飛成 − この手では、△57銀成 ▲同玉 を入れてか
ら△29飛成も考えられるが、以下、▲81飛成 △51銀▲61銀
とされ、△62金には、5筋の歩が切れているので▲52歩が利い
てしまう。
また、△37銀成 ▲同桂 △同角成では、以下、▲81飛成
△51銀 ▲33歩 △同桂 ▲同銀成 △同金 ▲45桂
△32金 の順が考えられ、▲33桂打。もしくは▲53桂成から
▲62銀くらいで先手勝ち。
H▲23歩 − 24銀と56角を活用する有効手。この瞬間が甘
そうなので先手としては嫌な場面でもある。
4図以下、
△64桂 ▲65角 I△46角 (5図)
解説D
I△46角 − 先の△64桂からの継続手だが、結果的によく
なかった。
他に、△56桂打 ▲同歩 △46角 ▲57桂 △24角
の順もあったが、以下、▲79金 △99竜 ▲88銀 △96竜
▲22歩成△同金 ▲44歩 の変化は、やはり先手があまして
いる。
結局、△46角では、△23歩と戻し、仮に▲35銀なら、△54桂
もしくは△99竜 として、息の長い展開を目指すべきだった。
6図以下、
▲79金 △56桂打 ▲69玉 △68歩 ▲同銀 △99竜
J▲42歩 △31玉 ▲22歩成 △同玉 ▲34桂△12玉
L▲41銀 (7図)
解説E
▲79金から▲69玉で、6筋に歩が利くも助かっている。
仕方ない△99竜に、入替わってJ▲42歩から寄せに入る。
先に▲22歩成から▲42歩との比較も考えられるところ。
31〜22〜12玉 と手順に逃げられ、後手にとっては光明が
さしたような感じだが、L▲41銀がピッタリな一着になっている。
7図以下、
△23金 ▲52銀不成 △24角 ▲89金打 (8図)
解説F
△23金から△24角と頑張るが、先手の寄せは24銀を取らせ
る事で上部を封鎖している。
▲89金打は安全勝ちをみたものだが、普通 に▲51竜 とし、
▲21竜〜▲32銀以下の詰めろを見て早い勝ちがあった。
8図以下、
△52銀 ▲99金 △61歩 ▲56歩 △34金 ▲82竜 △62香
▲32飛 △22桂 ▲31飛成 △33角 ▲88金左 △23銀
▲24歩 △同金 ▲36 桂 △34金 ▲24歩 △同金 ▲同桂
△同角 ▲91竜 △25歩 ▲15歩 △同 歩▲同香 △14歩
▲同香 △13歩 ▲26歩 △34銀打 ▲25歩 △同銀
▲41歩成 △14歩 ▲42と
まで109手で先手勝
*8図以下、投了図までの指し手については、先手に攻防共見
込みがなく、特に波乱も無く解説箇所はありません。
総評:
本局は、29手目▲45銀から戦いが始まり、以降の展開として、
一歩、先手がリードしたまま、それが終盤戦までつづいた流れ
であった。
一歩の差がなかなか縮まらないのも「角換将棋」の特徴。
それは仕掛けから一挙に終盤へ突入してしまうのが要因である。
しかしながら、決して長い持時間ではないが、35分/40秒とい
う条件も相俟って、なかなかの内容ある熱戦であったことが棋譜
からも見取れた。
解説 加部康晴